『若恋』榊の恋【完】
背を向けた彼らに罵声を浴びせるいい歳の男と、窓から身を乗り出すバカな男たち。
族に見捨てられて彼らは完全に自分たちの手に落ちた。
「裏切りやがったな!」
端から相手にもされてなかったことに激怒して喚く。
喚き声を背に族の連中がぞろぞろと工場跡地を後にして行き、
「榊、行くぞ」
若がひとり歩みを進めた。
「榊、後はおまえに任せる」
ひかるちゃんを傷つけた男を探し出して同じ目に合わせてやる。
手足を縛り冬の岸壁に吊るして凍死させてやる。
「若、わたしのやり方でいいですか?」
「ああ、好きなようにしろ」
若は口の端に笑みを浮かべたまま告げた。
転がっている族を一也や拓也、前広が放り出し鉄筋工場の門を閉めた。
「二階から下がるつもりがないならこちらから行きます」
ひとり階段を上がる。