『若恋』榊の恋【完】
二階からはバリンガチャンと何かを引き倒す音。ドスンガタンと重いものを動かす音がした。
ドアノブに手を掛けたが回るが押すことも引くことも出来ない。
迷うことなく吊っていた銃を取り出し蝶番の二ヶ所をぶち抜いた。
バン!
足で蹴飛ばし簡単に二階の一室へと足を踏み入れる。
バリケードが築かれてあったが入れない程ではなかった。
「出てきてください。このまま抵抗しても無駄です」
声は白々とした空気を切り裂いた。
「うるせえ!」
「殺られてたまるかっ!」
もう一つ奥のドアの向こうから声がした。
そのドアも遠慮なく撃ち破り弾を装填する。
「来るな!近寄るな!」
震える指で持つのはちゃちな得物。
笑える。
銃を持たせてももらえなかった下っ端のやつらが哀れにも子鹿のように足を震わせて立っていた。