『若恋』榊の恋【完】
バリケードを跨ぎ部屋に入ると、中で震えていた男は5人。
ひとりひとりそれぞれに蒼い顔をしていた。
「わたしの女を拐ったのは誰ですか?」
一斉に声が詰まる。
みんながそれぞれに関与していることは明白だ。
「一本一本の指の爪を剥がしていきましょう。わたしの女を乱暴しようとしたのは誰ですか?」
今度はみんながひとりの男を憐れむような視線で見た。
二階の窓に胡座をかいて、族をけしかけていた30歳過ぎの男だ。
「あなたですか…」
半端に伸ばした無精髭が、その顔が、目が憎くて手が震える。
その男に近づき持っていたナイフの柄を掴んだ。
「ひっ」
「わたしはここにいます。刺せないんですか?」
震えて刺すことなどできない男を追い詰める。
「では、わたしから行きますよ」