『若恋』榊の恋【完】



「二万五千トン岸壁には誰も近づかないようにしてください。これから行くので」



毅は特別驚くこともなくわかりましたと答えた。



「誰も近づかないようにさせておきます」



二万五千トン岸壁には大神物産の倉庫が並んでいる。

自由になりやすい場所だ。


縄で縛った全裸の連中をワゴン車に乗せて、鉄筋工場跡地を後にした。


大神物産倉庫群に到着すると5人を引っ張り降ろし岸壁に転がした。



「何か言い残すことはありませんか?」


口にテープを貼る前に目を覚ました男の顎を掴んで上向ける。


「…死にたくない」


ボサボサの髪の下の虚ろな瞳には深い絶望の色がある。


「運が良ければ助かるでしょう。運がよければね」


にっこり笑うと、全裸の連中は震え上がった。


小便を垂らした男もいる。

顔をぐちゃぐちゃにして泣き出したヤツもいる。



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