『若恋』榊の恋【完】
仁の反対
夜が明けきる前にひかるちゃんが眠る成田病院へと戻る。
「血の匂いがするからシャワーを浴びねえと勘づかれるぞ」
若からの一言がなかったらそのまま戻ってしまったかもしれない。
手早く血の匂いを消し服を着替えて静かに病院に戻った。
「いろんな話をしましょう。これからは包み隠さず」
ひかるちゃんにそう約束したのはつい先程だ。
すうすう。
ベッドに横たわるひかるちゃんから規則正しい呼吸音がする。
……落ち着いてるな。
喉がなっていないのを確認してホッと胸を撫で下ろす。
丸椅子に腰掛けて、点滴を受けながら眠るひかるちゃんを見つめる。
ひかるちゃんに自分の気持ちを見破られてから今日まで、ひかるちゃんの気持ちに真剣に向き合ったことがあっただろうか。