『若恋』榊の恋【完】
仁が賛成できないことをわかってる。
命が狙われる世界にふたりの妹を置きたい兄はいない。
「ひかるはまだ中学生だ。これからもっといろんな人と出会っていくだろう。それに比べて俺たちは年寄りの仲間入りだ」
呟くように話す仁は視線を合わせようとしない。
「…いいのか?」
「何がです?」
「ひかるのわがままに無理して付き合うことはねえんだぞ。おまえに好きな女がいるんなら傷が浅いうちに振ってくれた方がいい」
「わたしは付き合うと決めた以上はひかるちゃんを大事にしますよ」
「大事にするのと、ホレるのとは別だろ?」
「!」
「ひかるの恋は恋に恋してるだけだ。おまえだってひかるに言い寄られたから仕方なく付き合ったんじゃないのか?」
図星だった。
仁の言う通り、りおさんの身代わりにそばに置きたいと、身代わりでいいからそばにいたいと言ってくれたひかるちゃんに甘えただけだ。