『若恋』榊の恋【完】
死刑宣告
最近、りおさんがじっと自分を見ていることが多い。
コーヒーを入れてくれる時や、若と他愛もない話をしている時。
買い物に行くのについていく時。
「りおさん、何かわたしの顔についてますか?」
「え?え?」
顔に何でもでてしまうりおさんは隠し事が下手だ。
こっちから切り出すと顔を赤くして慌てて俯いた。
「なんかあったんですか?」
訊ねたらモゴモゴと口の中で呪文のように呟いた。
「聞こえませんよ、りおさん」
からかうのも楽しい。
けれど、りおさんを見ていてもどこか心が欠片ていた。
「ひかるが」
「ひかるちゃんが?」
「…落ち込んでいるの。榊さんに電話しても忙しいって言われるって」
「………」
「このごろよそよそしいって。会ってくれないって」
「………」
「だから―――何かがあったのかなぁって」