『若恋』榊の恋【完】
若を庇おうとして逆に自分が庇われている。
その目の前で、鉄砲玉が両手に構えたモノから火を吹いて銃声が響いた。
パンパン、
パンパン、
数発の乾いた音。
目を見開く。
彼女も両手を広げて自分達を庇っている。
明らかに庇っている。
ビシッ
紺のブレザーが裂けて変わった音がした。
ビッ
彼女の広げた右手の指が千切れてぶっ飛んだ。
「テメェ!」
カチカチカチカチ
空になったハジキを無造作に腰に突き刺し、
「ちっ、しくじった。人が集まる前に引き上げるぞ!」
本屋からも、隣の電器店からも薬屋からも何事かと人が出てきた。
ぐらりと彼女の後ろ姿が傾ぐのと。
追ってきた車にまた乗り込み彼らがタイヤを鳴らして走り去るのと同時だった。