『若恋』榊の恋【完】
「…ひかるちゃんが北海道へですか?」
「そうらしい。まだ正式に転勤が決まったわけじゃないようだがな」
「………」
「北海道へは行きたくないってあの娘がゴネてるらしい」
「………」
「離れたくない人がいるんだそうだ」
「………」
ちらり。
若がこっちを向いて口の端だけあげて告げた。
「榊、おまえのことだぞ」
「…違いますよ」
「拐ってやれ」
「できません」
「じゃあ、このまま北海道へ行くのを黙って見てるのか?こっちに戻ってくるって保証はないぞ」
「それでもわたしが引き留めることはできません」
「頭の堅いヤツだな」
「なんて言われたってだめです。わたしに関わるとひかるちゃんが不幸になります」
ため息をつきたいのはこっちだった。
ひかるちゃんがもしかしたら北海道へ行ってしまう。