『若恋』榊の恋【完】
数ヵ月後にはひかるちゃんの姿が見られなくなる…
目眩がしてきたが若の視線には負けられない。
「不幸かどうかは彼女が決めることなんだがな」
「………」
去り際にそう言って、若はテラスから中庭に出ていった。
若が出て行って窓辺に立つと、若とりおさんが寄り添っているのが見えた。
花が好きな両親やひかるちゃんのために贈る花を選ぶんだろう。
りおさんが小さい白い花のイメージなら、ひかるちゃんは夏に咲く黄色い元気な花のイメージだなって思った。
―――ひかるちゃんが北海道へ。
思いもしなかった。
いなくなる。
自分のいる街からいなくなる。
いなくなる。
りおさんの後ろ姿にひかるちゃんの背中が重なった。
―――いなくなる