『若恋』榊の恋【完】
「待て、何の情報もねえのに勝手に動くな」
「若はりおさんが拐われたら独りでも動くはずです。早くしないと」
ひかるちゃんが危ない。
「だからって闇雲に動いたら相手の思う壺だ」
「わたしひとりでも助けにいきます」
「だめだ!落ち着け榊!」
「わたしはいつだって落ち着いてます。車を出します」
「待て、榊っ!」
肩をぐっと掴まれて若の腕を逆に掴み返す。
「ひとりでも行きます」
ガスッ。
振り向きざまに鳩尾に若の拳が埋まった。
「落ち着け榊。妹は必ず助け出す」
ゲホゲホ。
思考回路が切断された。
鳩尾に一発入ってガクンと膝をつく。
息ができない苦しさから徐々に頭が冷静になっていく。
「落ち着いたか?」
「………」
「きっと大丈夫だ。榊」
「………」