七色ライラック




それは本当に衝動的な行動だった。


電車に乗った瞬間に気付いた彼女の姿。

今日も会えたと嬉しくなって。無意識に緩む頬。


いつもよりそわそわしたその姿に、一度深く息を吸ってから声をかけた。

俺の声は震えていなかっただろうか。


そんなことを思いながら彼女を見つめれば、目を大きく見開いた後上擦った声で小さく返された挨拶。


もしかして、彼女も緊張してくれているのかもしれない。


そう思ったら少しだけ気持ちが浮わついて。

ちょっとだけ勇気を出して制服のリボンに触れた。


いつもは綺麗なのに、今日は少しだけ曲がっていたそれ。

触れるチャンスだと思ってしまった俺はやっぱり男だなと思う。


手を伸ばしたせいか、昨日よりも近付いていた距離。




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