七色ライラック
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サァァァアア
吹き抜ける風に彼女の長い髪が揺れるのが見えた。
「気持ちいい風ですね」
彼女はなびく髪を手で押さえながら微笑む。
俺はその笑顔に心臓を撃ち抜かれた気分になりながら小さく頷いた。
俺の、あんなナンパまがいな誘いを恥ずかしそうに受けてくれた彼女と公園にあったベンチに腰を掛けたのが十数分前の話。
まさか簡単にyesの返事が返ってくるとは思ってなくて。
思わず"へ?"とアホみたいな声を漏らしてしまったのは記憶に新しい。
隣に彼女が座ってる。
そんな昨日まで想像もしていなかった状況に、笑えないくらい緊張してる。
気のきいた言葉を返せない自分が酷く憎い。