七色ライラック




小さなそれを眺めるたびに思い出すのは、隣にいた彼の姿。


まさか彼の隣に座ることになるなんて。

そんなこと出来る日が来るなんて夢にも思わなかった。


生徒手帳を届けてくれたお礼にと渡したクッキー。

それのお礼を貰うなんて何だか変な話だし、少し申し訳ない気分になったけど。

込み上げてくる嬉しさは隠しきれない。


あれから少しだけ近付いたような気がする彼との距離。


毎朝短い時間ではあるけど会話も出来るようになった。

まだ恥ずかしくて俯いてしまうことも多いけど、笑顔を見れる回数も増えた。



だから、忘れていたの。


彼は私なんかではとても手の届かない眩しい存在だということを。


決して、隣に並べない存在だということを。




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