七色ライラック




この時間は全体的に学生が多いのだろうか。


いつも乗る電車はもう少し空いているから、こんなに人が多い電車は久しぶりで。

どこに視線を向けていいのか正直迷う。


そう思いながら一人キョロキョロとしていたとき。

ふいに視界に入ってきた黒と金の髪を持った人。


慌てて視線を向ければ、そこには間違いなくあの人の横顔があった。

その姿にドキンと胸が高鳴る。


帰りの時間に会うのは初めてのこと。




(この時間に帰ってるんだ…)




彼は私に気付いていない。


ここからは少し距離がある。

私は彼の背が高いから見つけられたけど、背の高くない私は人混みに紛れてしまっているだろう。


それでも少し近付いてみたくて。

出来るなら少し声が聞きたくて。



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