七色ライラック
(でも、でも)
ドクンドクンと動きの早くなる心臓。
嫌な汗が背中や額に浮かんできて。
思わず視線を下に逸らす。
「だめだよカナぁ。サク女は男に慣れてないから優しくしたら本気になっちゃうってー」
「で!?どうなんだよ、本当のところは!」
騒めく胸の奥に一人落ち着くことの出来ない私。
そんな私の耳に届いたのは、核心をつく質問だった。
否定してほしい。
別に付き合っているとかそんな関係ではないけれど。
それでも朝の挨拶とか、この間の公園での時間とか。
宝箱とか、不意にくれる優しさとか。
全部嘘だったなんて思いたくない。
あれは私にとって何よりの宝物だから。
ぎゅっと目を瞑って祈るように彼の言葉を待つ。
「…別に、何でもいいだろ」