七色ライラック
大きな溜め息の後に面倒臭そうな声色で聞こえてきたその言葉。
否定ではない、言葉。
それは今までのことが全部嘘だったという肯定のように聞こえて。
きっと彼の周りの人たちにもそう聞こえたのだろう。
みんな"カナひどーい"などと言いながら楽しそうに笑っていた。
そして彼も、その中で表情を崩すことはない。
(う、そ…)
まるで地獄に叩き落とされたような。そんな気分。
一瞬で周りの音がすべて消えたような気がした。
自分がちゃんとこの場に立てているのかさえ、よくわからない。
ただ、彼の言葉だけがぐるぐると頭の中を回って。思考を支配する。
嘘だったんだ。全部、ぜんぶ。
(…違う…違うよ)
違うんだ。彼が嘘を吐いたわけじゃない。