七色ライラック




私が勝手に勘違いしていただけ。


別に彼が私を好きだと言ったわけじゃない。

私が彼を好きだから。

だから彼がくれた優しさを勘違いしてしまった。

別に、特別だと言われたわけじゃないのに。


並べる時間が嬉しくて、幸せで。

何も考えられなかった。


本当はあのクッキーだって朝の挨拶だって迷惑だったのかもしれない。


ただ彼が優しいから、私があまりに必死だったから断れなかったのかもしれない。




「ーっ」




そう思ったらもうどうしようもなくて。馬鹿みたいな自分が恥ずかしくて。

ゆらゆらと視界が揺れていく。

早く、早くここから出なくちゃ。

そればかり考える。


すると


ガタンッ


タイミングよく停車した電車。

降りる駅ではなかったけど、一刻も早く此処から抜け出したくて。




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