七色ライラック




私は固まった足を無理矢理動かしてホームに飛び出した。


そのあとのことはよくわからない。


わけもわからず走って、気付けばあの公園にいた。

初めて二人きりで話したあの公園に。


あのときはキラキラと輝いていた場所も、一人だとモノクロに映る。

心地いいと感じていた風も、今は寒いと思うだけ。


そんな空気に涙が溢れ出す。

一度出てしまった涙は止まらなくて。




「…ひっく…ふぇ…っ」




一人、二人で座ったベンチに蹲る。

苦しくて、呼吸さえ上手く出来ない。


本当に、本当に好きなの。

何も知らないけど、好きなの。


私はその日、初めて外で声をあげて泣いた。


泣いても泣いても消えない"好き"を吐き出すように。






雲が太陽を覆い隠した金曜日のこと。




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