七色ライラック
彼にしてみたら、私たちがしてる会話なんてこれっぽっちも興味の対象にならないだろう。
それどころか彼は私にだって微塵も興味がないと思う。
そんなの、よくわかってる。
紅南の人が私たちの学校を良く思ってないのは周知の事実だもん。
これは噂じゃなくて実際に紅南生が話してるのを聞いた。
お高くとまってる、と思われてるみたい。
それでも、私は彼が好きで。
この一瞬にも似た時間が宝物のように感じてしまうほど彼が好きで。
彼の声が聞こえたら自然と体が熱くなる。
偶然でも視線が合えば一日幸せに過ごせるくらい。
「っ」
扉が開き外に踏み出す瞬間。
あの日のように私は彼を振り返った。
それは臆病者の悪あがき。