七色ライラック




彼女があの言葉をどういう意味でとったかはわからない。

ただ、悪い意味でとったことだけはわかる。


あぁ…本当に最悪だ。


目を伏せドアの窓に額を合わせて項垂れる俺。

今、眉間には笑えないくらい深いしわが刻まれているに違いない。




(嫌われ、た…?)




そう思えば心臓が握り潰されたように悲鳴を上げる。


彼女に触れたときも同じように心臓が痛むのに。

その時とは全く違う、吐き気を伴う苦しい痛み。

目頭が熱くなるのがわかった。


それを堪えるように目を瞑り拳を握る。

近くで心配そうにしている雪に答える余裕はなくて。


電車が降りる駅を通りすぎてしまったことにも気付かなかった。






空が今にも泣き出しそうな色をしていた金曜日のこと。




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