七色ライラック




いや、確かにあれはグサッと胸に刺さったしたくさん泣いたけど。

今も頭のなかに響いてるけど。




(でも…)




それ以上に、彼の姿を一週間見かけていないことの方が私を苦しめていた。


たった一週間、いつもの場所に彼の姿がなかった。たったそれだけ。

自分で彼を避け始めたくせに。

それなのに私には大問題だったようで。


反対側のドアの近くに彼の姿が見えない。

それだけなのに今にも体中が泣き出しそうになる。

景色が、世界が欠けてしまったような気になる。


こんなにも彼の存在が大きくなってるなんて気付かなかった。


見ているだけで、それだけで満足だったはずなのに。

世界が違うなんて、遠い人だなんて初めからわかっていたはずなのに。




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