七色ライラック
そこにいたのは、背の高い銀色の髪の男の人。
ゾクッと冷たい震えが背筋を走る。
鋭い目付きのその人に、一目で不良だと思った。
それと同士に動かなくなる体。
蛇に睨まれた蛙というのはこういう気分なんだろうかと、回らない頭の隅で考える。
それは隣にいた亜実ちゃんも一緒みたいで。
「あ、あ…の…」
声が出ない。何か言わなきゃと焦るほど何も思い浮かばない。
息をするのはこんなにも難しいことだっただろうか。
瞬きすることも出来ずただ固まっている私をよそに、彼女と彼はもう一度頭を下げてホームの先へと歩いていった。
どうやら同じ電車に乗るらしい。
彼に手を引かれるようにして少し小走りになっている彼女。
一体二人はどんな関係なんだろうか。