七色ライラック
ガサッと布が擦れる音がして、隣に雪が座ったのがわかった。
「……」
「……」
お互いに何を言うこともなくただ空を見つめる俺たち。
目の前に広がるそれは、俺の心とは正反対に綺麗に澄んでいて。
まるで空色の絵の具をぶちまけたようだった。
ふと、彼女を初めて見つけた日もこんな空だったことを思い出す。
あの日から俺の世界は小さく、でも急激に変わり始めたんだ。
(…会いたい…)
何にも邪魔されずその色を讃える空を見て思うのは彼女のことばかり。
最後に見たあの後ろ姿が目蓋の裏から離れない。
何がなんでも追い掛ければよかったと、後悔したのは次の日になってからで。
あの日はいつ寝たのかも思い出せないくらい混乱していた。