七色ライラック
どんなに後悔したって時間は戻ってくれなくて。
握り締めた拳からはうっすらと血が滲んでいたけれど、それが痛いのかどうかもわからない。
だけど、俺の心に靄をかける原因はそれだけじゃなかった。
もっと言うとそれ以外のことの方が重大だった。
「…なぁ、雪。俺ってどっかおかしいのかな…?」
口から出た声は思っていたよりも透って。
あっという間に空へ吸い込まれていったそれ。
突然話の飛んだ俺の言葉に、見なくても雪が首を傾げたのがわかっる。
そんな雪に躊躇いながらも俺は再び口を開いた。
「…誤解されたかもしれないことより、さ。会えないことの方がツラいんだ」
そう。一番キツいのはそっち。
靄の原因はそれくらい簡単なものだった。