七色ライラック
その言葉に慌てて壁に掛かっている時計を見れば、すでに終了時間から十分近く経っていて。
どうやら気付かないうちに授業は終わっていたらしい。
授業の後半はその内容を全く覚えていない私。
かろうじてペンだけは握っていたようだけど。
それだっていつ手から擦り抜けてもおかしくない状態だ。
そんなに深く考え込んでしまっていたのだろうか。
「またあの人のことで悩んでるの…?」
そう思いながらも未だにぼーっとしている私に向かって、呆れたような溜め息とともに降ってきた言葉。
つられるように顔を上げれば、そこには予想通りの呆れ顔をした亜実ちゃんがいた。
もはや日常になっているその表情。
それでも見るたびに何だか寂しい気分になる。