七色ライラック
その中に詰まっている七色に光る飴玉は、やっぱり一つも口に出来ていない。
ただ今それを食べれないのはもったいないからという理由だけではなく、切ないからというのもあるのだけれど。
思い出す、これを貰った日の笑顔。
今はこれだけが、私と彼を繋ぐものだから。
食べてしまったら、彼との記憶がシャボン玉みたいに消えてしまうような気がして怖いんだ。
「…でも、優しかったよ…?」
曲がったリボンを直してくれて。わざわざ生徒手帳を届けに来てくれた彼。
お礼をするのは私だけのはずなのに、こんなに綺麗な宝物をくれて。
悪い人だなんて思えなかった。
たとえあんな場面に遭遇しても、嫌いだなんて思えなかったの。