七色ライラック
「だけどさ…」
「初めて、だったんだもん…!」
それでも渋る亜実ちゃんの声を遮って吐き出したのは、嘘に出来ない私の本音。
滅多に出さない大きな声が静寂に響く。
気付けば辺りに人はおらず、教室にいるのは私と亜実ちゃんだけになっていた。
私から出た大声に驚いたのだろう。
亜実ちゃんは目をパチパチさせて私を見ている。
その視線に構わず私は言葉を続けた。
「初めて、好きになった人なんだもん…」
ずっと、私は恋なんてしないんじゃないかと思っていた。
自分で言うのもあれだけど、それなりに裕福な家庭で育ってきたと自覚してる。
優しいお父さんとお母さんがいて、三つ離れたお兄ちゃんがいて。
それから大好きなおじいちゃんもいて。