七色ライラック




我ながら本当に恵まれた環境にいるんだなと思う。


だけど一つだけ。


過保護なお父さんとお兄ちゃんは、私には恋愛はダメだといってきかなかった。

変な男の人に騙されてはいけないからと、何度も説明されて。

私もそうなんだ、と疑問に思うこともなかったのだけれど。


いつかはお父さんとお兄ちゃんが連れてきた人とお見合いをして、そのまま結婚する。

それが当たり前なんだと思っていたし、異論もなかった。


でも




「…ドキドキするの」




彼の姿を見るたびに高鳴る胸。


最初は何か悪い病気になったんじゃないかと本気で思ったくらい。

それは体験したことのない感覚だったから。


だって恋なんて、本でしか読んだことのない感情だったんだもの。




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