七色ライラック




彼を見るたびぎゅっと締め付けられるように胸が痛くなって。


声が聞こえるたびに頭の先から足の先まで緊張して。


初めて会話をしたあの日。

心臓が壊れてしまうんじゃないかと思った。


手が触れた日。

視線と視線が重なって。

彼の瞳に映る自分の姿を見た瞬間、一生分の幸せを使い果たしてしまったんじゃないかと思ったの。


だって、夢にも思わなかった。

こんな感情があるなんて知らなかった。


これが恋なんだと、新しい感情を教えてくれた彼。

それだけで幸せだった。


それなのに




「…どんどん、欲張りになっていくの」




もっと会いたいとか。たくさんお話ししてみたいとか。

もう一度、触れてみたいとか。


そんなことばかり考えるようになって。




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