七色ライラック
吐き出したそれは今一番の願いだった。
それが欲張りだというなら、またこっそり見ているだけでも構わない。
話せなくても、触れられなくても我慢するから。
だからどうか、この恋を奪わないでほしい。
私の初めての恋を。
切羽詰まった声色で何とか紡いだ言葉に僅かな沈黙が生まれる。
「…美桜…あの人のことそんなに好きだったの?」
その沈黙を破った今までとは少し違う亜実ちゃんの柔らかい声に、ただただ必死に頷いた。
そんな私に亜実ちゃんが困ったように笑う。
いいじゃないか、叶わなくても。
だって誰かが言っていたもの。
初恋は実らないものだって。
そう心の中で自分自身に言い聞かせたとき。