七色ライラック
もし間に合ってなかったら、今頃あいつの金髪を全力でむしってた。
抜けるくらい本気で。
俺には、どうしてもこの時間この電車のこの車両に乗りたいわけがある。
(…いた…)
誰にもばれないよう自然な動作で周りを見渡して見つけた、反対側のドア近くに立っている女の子。
黒く腰まで伸びた綺麗な髪。
切り揃えられた前髪。
一度も染めたことがないであろうそれは、漆黒であるにも関わらず暗い印象は与えない。
寧ろどこか純潔を思わせるそれ。
友達らしき子から"ミオ"と呼ばれているのを聞いたことがあるから、恐らくそれが名前なんだろう。
彼女こそが、俺が何が何でも絶対にこの電車に乗りたい理由。