七色ライラック
あの時はこんな気持ちでもう一度ここに立つなんて思っていなかった。
(わっかんねぇもんだな…)
こんなに好きだったなんて。
こんなに好きになるなんて。
見ているだけだった彼女を追いかけて、俺は今手のひらを握ってる。
あの日の俺が見たら、一体どんな顔をするだろうか。
今日は、俺一人だけ。一人じゃなきゃダメだと思った。
そしてチャンスはもう今日しかないと、思った。
逃したら一生後悔すると。そう思ったんだ。
気付けばその辺に放り投げてあった洋服を適当に着込んで家を飛び出していた。
だから今日は白のロゴ入りTシャツにジーンズ。赤のシューズというラフすぎる格好。
この場所ではどう考えても完璧に浮いている。