七色ライラック




(…可愛い…)




何であんな可愛いんだろうか。


思わず赤くなる顔を無理矢理抑えて何とかポーカーフェイスを保つ。


それでもさすがに早く脈打つ心臓の動きはどうすることも出来ない。



俺が彼女のことを初めて見たのは、夏休みが明けた去年の秋口のことだった。



その日、進級に関わるかもしれないと半ば脅された科目の補習が朝一であった俺は、普段よりも数本早い電車に飛び乗った。


いつもは始業ギリギリに登校しているため早い時間に電車に乗ることはなかった俺。


電車の中は思ったより静かで自分の荒い呼吸がよく響いて。


いつもより少し早く起きただけのはずだが、体は覚醒していなかったらしく階段を駆け上がっただけで息が切れた。




< 19 / 244 >

この作品をシェア

pagetop