七色ライラック




「すき、なんで…っ」




鼓膜を揺らす細い声。

あの日以来聞くことが出来なかった彼女の声が、望んだ言葉を俺に届ける。

涙に瞳を揺らしながら、それでも真っ直ぐに俺を見つめて。


嘘だ。まさか、そんな。




(そんなこと、あるわけない)




そんな否定的な言葉が頭を過ったけれど。

その言葉が全身を廻るより先に体が動いた。


ただ、彼女に触れたいと。この腕に閉じ込めたいという激情のような衝動。


彼女が言葉を言い終わる前に俺の腕は彼女へと伸びて。その体を抱き締めていた。


一瞬ビクリと大きく揺れた彼女の体が逃げる様子はない。




「マジ、で…?」




独り言のように呟いた言葉に、彼女が躊躇いがちにコクリと頷く。




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