七色ライラック
(意外と人少ねぇな)
ぼんやりとそんなことを考えながら、見慣れている景色よりも幾分人の少ない車内で数回深呼吸を繰り返してから顔を上げる。
その時だった。
俺の視界に黒髪をなびかせる彼女が映ったのは。
ドクンッ
見た瞬間、惚れたと感じた。
心臓が痛いくらい震えて。
今まで考えていたことなんて一気に吹き飛んでいった。
それくらい衝撃的だったんだ。
それが一目惚れってやつの意味を、唐突に理解した瞬間。
それからの行動は決まっていて。
俺は外を見るフリをしながらチラチラと横目で彼女を観察する。
変態っぽいとか思わなかったわけじゃねぇけど、それ以外何も出来なかった。