七色ライラック




そして赤く染まった耳と頬。


その色付いた意味を、俺の好きなようにとらえてもいいんだろうか。

自惚れても、いいんだろうか。




(…自惚れるなってほうが無理だけど)




くれた言葉も腕の中の彼女も、夢のようで全て現実なのだから。


緩む口元はもう自分じゃどうすることも出来ない。

彼女に向く視線もどうしようもない。


そんな俺の視線に気付いたのか、色のついたそれを隠すように彼女の手が俺の背中に回って。ぎゅっと服をきつく握りしめた。


あの時掴めなかった手が。あの日俺が繋いだ手が。

今度は彼女の意志で俺に触れてる。


カタカタと僅かに伝わってくる振動。

それは彼女の指先か。それとも俺の指先か。


どちらのものかはわからない。




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