七色ライラック
けれどその震えた温もりが、どうしようもなく俺を幸せにするんだ。
「…あのぉ…」
そんな幸せを深く噛み締める俺の耳に入ってきた、彼女とは別の女の声。
それはとても遠慮がちに、そして物凄く気まずそうな色をしていて。
その声に思わず顔を上げれば、俺が彼女を呼んで欲しいと頼んだ女子生徒が困ったように微笑んでいた。
そして俺と目が合うと少し口を濁しながら躊躇いがちに口を開く。
「お取り込み中、申し訳ないのですが…ここ、校門…」
「……あ?」
「……へ?」
その言葉に俺と彼女の声が重なる。
バッと体を離して周りを見れば、俺たちの周りに出来ているたくさんの野次馬。
その光景にサッと体から熱が引いていった。