七色ライラック
周りから聞こえてきた黄色い声は無視だ無視。
混じって聞こえてくる非難の声も無視。
今は一刻も早くこの場を離れたい。
二人きりになりたい。
「あ、あの!」
後ろから彼女の戸惑った声が聞こえてきたけど、聞こえないふりをしてぎゅっと小さな手を握る。
すると、一瞬震えたあと躊躇いがちに握り返された手のひら。
伝わる微熱が、アツイ。
ドキン、ドキン
それだけで、たったそれだけでどうしようもなく嬉しくて幸せで。
締まりのない顔を見られないように、ただ真っ直ぐ前を向いて走った。
どうせならこの道がどこまでも続けばいいと思いながら。
俺の足が漸く止まったのは、駅が目の前に見えた頃。
そこでハッと我に返る。