七色ライラック
振り返れば、肩で息をしながら俺を見つめる彼女がいた。
「わ、悪い!すげぇ走っちまって…」
体力の差なんて全く考えていなかった。
慌てて声をかければ、ブンブンと大きく頭を横に振る彼女。その姿にまた胸が疼く。
未だに手は繋がれたまま。
人波が増しているのもわかっていたけれど、離すことは出来なくて。
俺、ものっすごく我儘だから。
俺のものになったからにはこの手を離したくない。一秒でも長く繋がっていたい。
そんな思いを隠せなくて、手を繋いだまま真っ直ぐ彼女を見つめる。
そうすれば頬を赤く染めた彼女の少し潤んだ大きな瞳と視線が重なって。
逸らされることのないそれに、心臓が大きく脈をうった。