七色ライラック
綺麗な黒い髪の隙間からちらちらと覗く白い肌。
長い睫毛とピンク色の頬。
見れば見るほど彼女の全てが俺の体を熱くさせる。
声をかけたい。声を聞きたい。
あの顔を真っ正面から見てみたい。
だけどただのナンパな奴だなんて絶対に思われたくない。
そんな葛藤をしているうちに、彼女が使う最寄り駅に着いてしまって。
決めきれない自分の気持ちに舌打ちしながらもどうしたらいいのかわからないまま、彼女の後ろ姿を見つめた。
彼女が電車を降りるその一瞬。
振り返った彼女の真っすぐな瞳が俺とぶつかった。
ほんの数秒の出来事。
それでも俺の心を丸ごと奪われるには十分すぎる時間。
その日から俺は苦手な早起きも気合いで頑張って同じ電車に乗っている。