七色ライラック
ガヤガヤと人の波に乗って聞こえてきた小さな声。
間違いなく、彼の声。
それを耳が拾い上げた瞬間、今まで以上の緊張が体を走る。
話し声からすると、どうやら今日は一人じゃないらしい。
ちらりと声のする方に顔を向ければ、あの二色の髪が見えた。
(き、来た…!)
見えた横顔。その横顔に顔が熱くなる。
今日も格好いいとかそんなことを思っている暇はない。
いや、ちょっと思ったけど。それどころではない。
その姿に一気に緊張が増す。
私の全神経が彼に注がれてる。
もしかしたら昨日のことは夢だったんじゃないか。
全部私の妄想だったんじゃないか。
そんな思いが何度も頭の中を巡って。
上手く思考がまとまらない。