七色ライラック




(どうしよう、どうしよう…!)




視線は彼に釘付けのまま、体の熱だけが上がっていく。

きっと顔は真っ赤になってるのだろう。


こっちを見てほしいような、見てほしくないような。

そんな矛盾した感覚。


あぁでもやっぱり、こっちを向いてほしいかもしれない。


その時


パチッ




(…あ…)




彼の顔がこちらを向いて、視線が重なった。


そして




「…うわぁ…」




ふわりと穏やかに口元を緩めた彼に空気が揺れる。

トクントクンと波打つ鼓動は早さを増すけれど。

消してしまいたくないと願うくらい心地好い。


まるで初めて彼を見たときのようだ。

とても綺麗で、まるで絵画のような彼。


瞬きをするのも忘れてただその姿を見つめていた。




< 216 / 244 >

この作品をシェア

pagetop