七色ライラック
「はは。顔、真っ赤」
そんな私を見て優しく目を細める彼。
昨日までは見ることが出来なかった、彼。
(は、恥ずかしい…!)
慣れない彼の表情にどうしたらいいのかわからない。
五月蝿い心臓の音が彼にも聞こえてしまいそうで。
それを隠すように俯きながら右手で髪を擦る。
そんな私の髪に落ちてきたのは、やっぱり私の心臓を苦しくさせるあの温もりだった。
俯いていてもわかる彼の指先の感触。
髪を撫でるその手の動きがまるで肌に触れているようにわかってしまう。
恥ずかしい。でも、心地好い。
「…帰り、さ」
うっとりとその感触に酔いしれていると、彼がゆっくりと口を開いた。
どこか気まずそうなそれに慌てて顔を上げる。