七色ライラック

そこには困ったように眉を寄せる彼がいて｡

何か気に障ることでもしてしまったのかと一気に不安が押し寄せてきた｡




「あ､いや…そんな顔すんなよ」




押し寄せた不安が顔に出ていたのだと思う｡

彼は焦ったようにその表情を戸惑いに変え､悪い話ではないはずだからと小さく眉を寄せて笑った｡


その顔にホッとしながらも不安は消えない｡

それくらい､私たちにはまだまだ時間が足りないのだと思う｡

不安を紛らせるようにじっと彼の瞳を見つめた｡


そんな私に彼は暫く視線をさ迷わせた後､すっと深く息を吸い込んだ｡


そして




「一緒に帰れないかな､と思ったんだけど､も…」




どうかな､と｡

少し緊張した面持ちでそう言った彼に頭が真っ白になる｡