七色ライラック
「美桜、早く行こうー!」
そう亜実ちゃんに急かされながらもホームから動けない私。
まだ耳も頬も熱い気がする。
そんななかで今一番熱いのは彼が最後に触れた手のひらだった。
手のひらを開けば、中には四つ折りになったメモ用紙。
そっとひろげるとそこには綺麗な字で携帯の番号とメールアドレスが書かれていた。
下には丁寧に"東吾奏芽"と名前も書いてある。
他の人から見たらただの文字の羅列かもしれないその文字が嬉しくて。
自然と頬が緩む。
一向にホームから動かない私を迎えに来た亜実ちゃんに物凄く変な顔をされたけど、全然気にならない。
(早く放課後にならないかな…!)
放課後が楽しみになった天気のいい月曜日の朝のこと。