七色ライラック
日常すぎて最初はわからなかった。
いつもこの季節になると通学中に決まって香るこの匂い。
ジャスミンのような、そうじゃないようなこの匂い。
近所の家で咲かせている綺麗な紫色の花。
いつだったか風向きのせいかいつもよりいい香りが広がっていた日があって。
ふと立ち止まっていたらその家の人が教えてくれたんだ。
その花の花言葉を。
(たしか…初恋の…)
そうだ。ライラックの花言葉は"初恋の思い出"。
思い出した瞬間、その香りと彼女の姿がバッチリと重なった。
まさにその通りだ。
彼女と出会ってからの日々は俺の大事な大事な初恋の思い出。
「…俺も」
一生に一度の、大切な思い出。