七色ライラック
一度もまともに恋なんてしたことがなかった、ただ必死に大人ぶっていた俺の初めての恋。
本気でこの手を結びたいと思った相手。
「憧れてたんだ。こういう彼氏っぽいこと」
一度もやったことなかったから、と呟けば彼女が驚いたように目を見開いた。
やっぱりそんなふうに思わないよな。
だって俺紅南生だし。
それだけでも信用ないのに、こんな見た目だし。
経験豊富そうに見えるとはよく言われる。
実際、今までの女関係を突っ込まれると口を閉じるしかない。
でもこうしたいと思うのは、こんなにも好きだと思うのは間違いなく初めてで。
込み上げてくるのはどうしようもなく恋しい気持ち。