七色ライラック




辛辣にそう言った彼女の友達は確実に俺たちの方を見ていた。


どうやら彼女には聞こえなかった言葉も友達の方にばっちり聞こえていたらしい。

…本当、ついてない。


それでも彼女にそれを伝えないでいてくれることに感謝する。

いい子なんだよな、きっと。


いや、言うまでもないと思ってる可能性もあるけど。


それにしても




(やっぱ待ち合わせなんてしないで一人で乗りゃよかった)




切実にそう思う。


そうすればこんな会話聞かれることもなかったし、そもそもすることだってなかった。

ただいつも通り彼女の姿を眺められたのに。


そんな後悔が俺を襲う。


そして決めた。

やっぱり明日からは一人で乗ろうと。


幸せな時間を邪魔されたくはない。




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