七色ライラック
廊下は走っちゃいけませんって、初等部の頃からずっと言われてるのに。
「真奈美ちゃん、どうしたの?そんなに急いで…」
顔を真っ赤にさせ肩で息をするのは大西真奈美ちゃん。
彼女が息を吸うたび肩につかないくらいのショートボブの髪が揺れて。
あまりに慌てた様子の彼女に声をかける。
すると
「こ、校門に…"イズミ"さんを探してるっていう紅南の男の方が来てて…!」
もしかしたらと思って、と真奈美ちゃんは私の手を取った。
彼女の言葉に人知れずドキッと高鳴った私の胸。
だって、紅南といえば…
(あの人が通ってる学校だ…)
そう思っただけで顔が熱くなる。
これは重症だ。
別に彼が来たってわけじゃないのに。